有酸素 
運動負荷がそれほど高くない場合、脂肪を酸素によって分解し、エネルギーを作り出す。酸素が必要なため、「有酸素運動」と称される。主に、「呼吸が早くならない程度の運動」までは、この脂肪から作り出しているエネルギーが中心である。

脂肪はエネルギー生産速度が遅いが、大量のエネルギーが必要とされない低負荷の運動では中心的なエネルギーとなる。
人は多くの脂肪を蓄える事が出来、用意できるエネルギー量は最大である。

有酸素運動の特徴として、「エネルギーさえ」切れなければ、大変に長時間に渡って連続して運動を継続できる事が挙げられる。競輪学校では無限とさえ表現している。

この長時間に渡って運動を続ける力は、解糖閾値やATP-CP域では実現できない。
有酸素を利用した長時間による運動によって、慢性的な低酸素状態が再現され、体は酸素運搬能力を強化する「造血」を促し、同じく慢性的な酸欠となった腕や足といった箇所に血管を増やして血流を増加させる反応を起こす。

これら基礎的な持久力は、練習をこなす事が出来る量にも影響をするから、短距離志向だからといって、必要ないという事はない。またこの上に築かれる、解凍閾値やATP-CPでの運動力にも影響を与える。

また、実際の練習において、有酸素運動はその割合が高くなりやすい。
例えば、10秒の全力・5分のインターバルのスプリントのメニューを実行すると仮定する。10秒のスプリントを6本=計1分に対し、インターバルによって5分×6本=計30分の有酸素運動を一緒に行なう事になる。スプリント練習の、実に90%は有酸素運動である。

その為、有酸素の性質を良く理解し、最も有酸素効果が働く運動を心掛ける事は、次第に大きな能力差となって現れてくる。
 ATポイント

ATポイントとは、有酸素の限界である。つまり、運動負荷をこれ以上上げると、酸素が不足し、エネルギーも足りなくなって行く限界である。このATを越えると、呼吸を早くして酸素を大量に取り入れようとする。

 

上の2つのグラフは、全く同じ運動を行なったグラフである。左のグラフは、有酸素の限界が「3」であり、60秒を過ぎたところから有酸素の限界を超えてしまっている。
一方で右のグラフは、有酸素能力が向上し、ATポイントが「4」に引き上げられている。そのため、60秒経過した時点でも有酸素運動の中に収める事が出来ている。

有酸素能力の強化とは、このように酸素を取り込む力と、酸素を体中に運搬する力を強化してATを引き上げ、有酸素で運動する事が出来る運動負荷の限界を延ばして行く事である。

なお有酸素能力は、グラフのように、ATポイント手前付近での連続運動を行なう事によって、積極的な強化が可能である。またこのATポイント手前の運動とは、理論上は「無限に運動し続ける事が出来る最高速度」である。

ポイント!
・低負荷は脂肪を酸素を使ってエネルギーにする
・酸素を取り込む力と体中に巡らせる力を強化する

関連項目
⇒ロングスローディスタンス
⇒エンデュランス走
次項→解凍閾値 →ページ先頭へ戻る
→トレーニングトップへ戻る