プロテクターの着用について
死亡してから体を守りますか?
オートバイのツーリング愛好家の間では、プロテクターを装着している事も多いが、自転車となると、「プロテクターは大げさだ」と捉える人が多い。

何せ昔は、ヘルメットを被る事でさえ「大げさだ」とされた時代があったほどである。

しかし、当クラブでも、年に2〜3回は交通事故が報告されているし、これに目撃数を追加すると、更に数は増加する。オダックスジャパンが行なうBRMでも、開催のたびに自損事故、ひき逃げといった報告がされているのが実際である。

このページでは、競技は元より「交通」においての、プロテクターの重要性についてまとめた。

こちらがいくら模範的な交通走行を行なっても、「相手が交通ルールを守っているとは限らない」事を理解しなければならない。

プロテクターはおおげさ?
「自転車を運転すると、偶然にして大きな事故には遭遇しない」
などという都合の良い事は起きない。
自転車はスピードが出ないから安全と感じるかも知れないが、そうであれば、同じようなスピードの原付バイクと同等の事故は覚悟した方が良い。

また、いかに低速でも、まともに壁にぶち当たれば、相応の被害は覚悟しなければならない。ガードレールのでっぱりに直撃したり、右折してきた自動車に進路を塞がれる事故などは珍しくない。落車した後に車に轢かれずに済む保証もないし、緊急回避した結果、対向車線の自動車と正面衝突しないで済む保証もない。

「自転車で事故に遭っても、軽傷で済む」
などという都合の良い事も起きない。実際、2010年のBRMでは、不幸にして全身麻痺に見舞われる事故が発生した。

このように、自転車は事故に遭いづらく、また軽傷で済むに違いない、という、根拠の無い錯覚は捨て去ったほうが良い。
自転車はプロテクターを着けるスポーツ
ロードバイクの人気が高い為か、公道を、「ロードレース」の装備そのままで走行しているケースも珍しくない。

しかし、ロードレースは、当然道路封鎖され、安全を確保した状態で行なうレースであり、「公道」との安全性は全く異なる。

自転車にプロテクターは大げさと思うかも知れないが、実際はプロテクターを着けない競技の方が珍しい。その危険度に合わせて装備を強くするのが通常である。
意外かも知れないが、競輪もプロテクターを装着している。ダウンヒル競技など、危険性が上がるほど、その防御の装備が重厚になっていく。

つまり公道を走行するのであれば、その「危険度」に見合う装備を施すのが、本来の自転車のスタイルである。少なくとも、ロードレースなどの安全性が高い競技と公道を、同程度の安全性などと取り違えない方が良い。

自転車のプロテクターを生産しているシックスシックスワンは、面白いフレーズを商品に記載しているので、引用する。
「賢いライダーは、そのプロテクターが必要だったと気付く前に、プロテクターを装着している」
プロテクターは格好悪い?

防御を固めて走る事は、格好悪く、情けない、そんな思いを持つ人もいるかも知れないが、面白い事に、そんなプロテクターを装着し、またプロテクターがファッションとして成立しているが、逆にワイルドさとラフさ、クールさを備えている、BMXなどのエクストリームスポーツや、ダウンヒルなどの、危険度の高い競技郡である。若者のカジュアルファッションのようにプロテクターを装着している姿は非常にクールである。

もしプロテクターを装着して、格好悪いと感じたら、それは、格好悪い着け方をしているのが原因である。

防御を固める事自体が軟弱で格好悪い、と思うのであれば、ヘルメットなどを着けず、裸のままでダウンヒル競技を行って見れば良い。自分の稚拙さが分かるだろう。
プロテクターの種類
◆ヘルメット

わが国においては、自転車運転時にはヘルメットの装着義務はない。しかし、二輪車の死亡原因のうち、半分近い47%を占めるのは頭部損傷によるものである。頭部損傷は重症に繋がり易い。

頭部の保護には、ヘルメットが有効であるが、前述の通り、日本はヘルメットの装着義務がないため、ヘルメット強度の義務もない。実際Mixiなどの事故体験においても、ヘルメットが衝撃によって割れたと証言している例が多い。ヘルメットはつぶれる事で衝撃を吸収するが、割れてはこの効果が得られない、強度不良を示している。

ヘルメットの強度に関しては、ヨーロッパの基準に適合している、ECマークが付されているものや、日本のSGマークが付されているものなど、一定の安全基準を満たしているものを装備する事を強く推奨する。

特に、「軽いヘルメットほど、強度が弱い」と考えてよい。
また、エアロヘルメットは、「空気抵抗を減らす」事が目的であり、頭を保護する事が目的のプロテクターではない。実質ノーヘルに近く、日本自転車競技連盟でも、登録選手が公道を走行する際に、エアロヘルメットを装着する事を禁止しているし、ランス・アームストロングも使用を警告している。

また、ヘルメットには、ほぼ「3年」の使用期限がある。これは、ヘルメットの素材が紫紫外線によって劣化し、強度が低下するなどの理由がある為である。期限が切れたヘルメットは、交換する事を強く推奨する。

ヘルメットの装着の仕方も、不適切であるケースが多い。おでことヘルメットに指が入るような隙間がなく、頭部から動かず、あご紐が指1〜2本入る程度に締められている必要がある。衝撃の際に、ヘルメットがずれては何の意味も無い。

手で軽く動かして確認する程度では確認にならない。実際には、時速30km/hで、ガードレールに頭を打ち付けるくらいの衝撃を受けても、固定されるかを想定するべきである。

色は、白や黄色だと、夜間に確認され易い。

◆胸部ガード

二輪事故の死亡原因のうち、36%は胸や腹部に強い衝撃を受ける事による損傷である。特に、肋骨が肺に刺さって窒息したり、肋骨が折れる事によって心臓マッサージが出来なかったり、腹部への強い衝撃による内臓破裂で死亡する。

この胸部への衝撃は、「右直事故(直進している二輪車が、右折しようとした自動車に直撃する事故)」や、落車した後に自動車に胴体を轢かれる事によって起こす事が多い。

胸部ガードは、自転車はおろか、自動二輪運転手でさえ認知度が低く、非常に装着率が低いのが実情であるが、白バイ警官の装着から、オートバイ愛好家の間で知られるようになった。

頭部とこの胸部をガードすると、死亡原因の実に85%に対策が取れる事になる。

脊髄ガード

死亡に繋がるリスクは低いが、強い傷害を起こしやすい為、軽視する事が出来ない。頚椎、脊髄は、低い位置で損傷するほど障害の程度が低く、そこから高くなるにつれて、両足の麻痺、排泄機能の喪失、両手のマヒ、更には自律神経の喪失、自律呼吸の喪失と、障害の強度および死亡リスクが高くなる。

脊髄は背中の保護が最重要である。特にロードレース用のジャージの場合、背中にポケットが付いているが、ここにポンプなどの固いものを入れて走ると、落車した際、凶器となって脊髄を破壊する事は覚悟しなければならない。

エルボーガード

自転車が落車する際、頻繁に打ち付けるのが肘である。特に、ハンドルから手を離さず、受け身が取れる人は肘から着地する事が多いので、肘をガードするだけで大分被害は小さくなる。

ニー・シンガード

膝、スネの怪我は、自転車の場合比較的多い。

ただしこのプロテクターの欠点は、自転車は常に脚を動かし続ける為、動いたり、足に食い込んで痛くなったりする点である。オートバイ用はこの点は全く想定されていないため、自転車用を使用するなど、最初から動く事を想定したプロテクターを選択する方が間違いが少ない。

グローブ

自転車の手袋は、指が出たショートフィンガータイプだと思う人が多いが、それは競技の話である。

指むき出しの手袋は大変危険なので、指が隠れる手袋が必要である。またナックル部分にガードが入ったものが推奨される。
余談だが、落車した際、手を付いて防御しようとは考えない方が良い。ほぼ防御しきれないし、指を骨折するリスクが非常に高い。
競輪では、ハンドルから手を離さず、肘や腰などの側面全体から落ちて衝撃を吸収する受身をとる事を指導している。


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